企業の闇と「真実の瞬間」

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企業経営者はだれもが知る有名な言葉の一つ。スカンジナビア航空の業績回復のストーリーで紹介される。意図せず露呈した一瞬の事実こそが企業の本質を示すとする発想。心に強く突き刺さりクチコミによる伝播力も強い。今は誰でもSNSを利用できるから相乗効果で伝播力も桁違いだ。「真実の瞬間」はしかしマイナスのメッセージに限らない。感動を与えればそれもたちまち仲間内に限らずSNSの向こう側の全世界に伝わる。

何が大事か。顧客が感じたこと、マイナスであれプラスであれ一早く正しく理解することだ。顧客、顧客だった人、顧客になるかも知れない人、彼らの思いを理解することだ。そのことを理解する経営者は、色々なコンタクトポイントを用意している。しかし、ここにこそ大きな闇がある。多くのコンタクトポイントは無機的で単能的で期待役割への理解も不十分なレベルにとどまる。只のブラックホール/闇でしかない顧客理解に経営者自身が気づいていないこと。

経営者の目が節穴。経営者の目が只の闇。おざなりのバラバラの報告を受けて満足している経営者、裸の王様にされている経営者、これこそが企業の闇。企業の闇とは只のブラックホールになった経営者の目のことだ。裸の王様には真実の瞬間が伝わることは無い。

どの経営者も知っている真実の瞬間。正しく見えている経営者は限られている。






一般市民の一人が目にしたちょっとした事実。嫌な話や悪い話だけではない。称賛したいような、エールを送りたいような良い話もある。いい話を積極的に紹介したいと思う人が殆どだろうが、当たり前品質に慣れてしまうと、人は不足不満にばかり目が行くようになる。残念なことだ。



ほんの数秒間のこと、無視しても問題ないこと。だから顧客が騒ぐこともない。でも、信頼は既に失っている。親しい友人には真実が伝えられる。企業側が真実っを知ることは無い。経営者の目は只の闇だから。

顧客によっては、声を上げてくれることもある。店先、電話口、問い合わせフォームなどで。この声さえも拾えない企業がある。馬鹿なスタッフが裸の王様のような傾斜を作るのではない。馬鹿な経営者が勝手に脱ぎ捨てて裸になっているだけだ。スタッフの資質管理も勿論できない。



真実の瞬間:

その企業のことは、雑誌やテレビなどのメディアを経由したり、世間話の話題になったり、基本的には間接情報が最初に飛び込んでくる。

次にその商品やサービスに接して改めて評価することになる。問題があれば品質部門やクレーム処理の部門とコンタクトして更に評価を深めることになる。

全体の流れがスムーズに運ぶのか、意外な世界を見せられるのか。光を当てれば善いも悪いも含めて浮かんでくる真実がある。



()追記

真実の瞬間とは、奥に隠されていた本質に光が当たる瞬間。見てはいけないものが見えた瞬間。それは顧客、取引先、社会への裏切り行為。

しかし、時には信頼を確実にするために行う想像を超える企業努力の景色かも知れない。称賛と尊敬に値する輝く景色のこともある。 隠された美談も。

残念ながら、実際に目にするのは裏切り行為ばかりだろう。


 ※

  • 「真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか」は経営管理の世界では常識の範疇。社会の価値観の変遷の中で批判的にとらえる人も少なくない。
  • 「メタリカ 真実の瞬間」はタイトルは似ているが原題は 「Some Kind Of Monster」で本旨とは関係ない。
  • 「赤川次郎 真実の瞬間」は真実を知る(知らされる)ことによる衝撃を意味では通じるものがあるだろうが、やはり本旨とは関係ない。 


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